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トシくんは、IT専門学校を卒業後、中規模SIerにて働くコーディング大好きな若手SE。 プログラミングならなんでもござれ!…と強気な一方で、商慣習とかについてはまったくの門外漢。故に「なんすかそれは」と、失敗なんかもポコポコと。 そんな彼の体験談。はてさて、今回の話やいかに。

 「ウチはシステム開発会社なのに、社内のインフラがあまりに弱い」  営業部、業務管理部、果ては経理部に至るまで、各方面からそんな声が出てきたもんで、「んじゃいっちょインフラ整備に乗り出しますか」ということになりました。

 とはいえ、メイン業務が止められるわけじゃないので、なるべく1個1個の案件を細分化して、たくさんの人に振り分けられるようにして、ついでに若手の教育も兼ねるかってことになって、「やたらたくさんプロジェクトリーダがいる、社内インフラ構築ミッションチーム」なるものが開発部内に発足となったのです。

 もう、みんなして兼任状態。でも、若い子にもなるべくリーダ役がまわるように切り分けたのもあって、不思議と悲壮感のないお祭りイベントのような様相を呈しています。

 そんな中、私に回ってきたのは「債権・債務管理システム」というものでした。要はウチが受注した際に生じる債権とか、発注時の債務なんかを管理するシステムってわけですね。あ、債権ってのは別に借金とかそういうのでなくて、「買ったけどまだ支払いは済ませてない」とか、「納品したけどまだ支払いを受けてない」とか、そーいう未払い金の扱いのことですよ。

 さて、そんなわけで仕様を策定すべく、営業部、業務管理部、経理部の方々からヒアリングを行いまして、コツコツまとめて設計書をこさえたんです。

 それでですね、「設計が固まったんでレビューお願いします」と皆さんに声をかけて集まってもらった席でのことでした。突然営業さんが

「なんだよコレ」

とつぶやいたかと思ったらバサリと設計書を机の上に広げまして、

「入金のところだけど、これ、消し込み処理について何も考えられていないじゃないか!!」

と、そりゃもうすごい勢いで指摘してきたのです。


「は?消しゴム処理…ですか?」

 

営業さんの勢いに気圧されながら、なんとかそう聞き返す私。
その言葉に…気のせいじゃないと思うんですけど…一瞬会議室の中が凍り付きました。


営業:「まさか消し込み処理知らないの?」

業管:「そんなの基本中の基本だろ?」

経理:「うわ、なんだよコイツ信じられねーな」

 

ザワザワザワ、ザワザワザワと口々に出るのは呆れかえった声、声、声。



「す、すみません、わかんないんで教えてください」



と食らいついてなんとか教えてはもらえたんですが…目上の人たち3人からストレートにバカ扱いを受けたもんで、この後凹みまくったのは言うまでもありません。

消し込み処理…私も知らないですこれ。フトシくん曰く「A社から1万円のものを購入、代金入金時には振込手数料をA社が負担するので、たとえば振込手数料が千円なら差額の9千円を支払う。9千円と千円は会計上別なので、この差額を調整する処理ができないといけない。これが消し込み処理」と教わったいうことらしいんですが。

いや、それ違いますよ?

へ!? 違うの!?

んっとね、たとえば「千円の売掛金があって、そこに千円の入金がなされて、『あ、この売掛金は回収済みになったな、んじゃ消しとこ』ってなって、帳簿上で済みとなる」みたいな、「誰から入金があったか確認する処理」が消し込み処理。その話のケースだと、買掛金があって「振り込んだから済み」という処理に置き換わるわけですけど。

差額調整じゃなくて、帳簿上の付き合わせを行うのが「消し込み」なんだ。

その通り。

うわ、違うじゃんか、フトシくん…。

ちなみに、伝票単位で消す「伝票消し込み」と、残高を消していく「残高消し込み」とに分かれます。

あ、でも待って。んじゃ今回の話って、どんな扱いになるんでしょ。つまり営業さんは「消し込み処理がない」ではなくて、「消し込み時の処理がちゃんと考えられてない」というツッコミを入れてたことになるわけですか?

まぁそうですね。支払い手数料等、差し引くものがあるなら「なにがどんな名目でいくら引かれるのか」というその情報。そして、伝票か残高どちらの区分で消し込み処理をするのか…などなどおさえられるようにしてくれてないと。

うわぁ、そんなんこっちでわかっとけってのは、やっぱキツイなぁ。

作家・きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。本業のかたわらWeb上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
URL:http://www.kitajirushi.jp/
※大好評 Webエンジニア武勇伝にも掲載!第10回 きたみりゅうじ氏

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