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Webエンジニアのために・・・ SEフトシ君の転ばぬ先の商慣習

トシくんは、IT専門学校を卒業後、中規模SIerにて働くコーディング大好きな若手SE。 プログラミングならなんでもござれ!…と強気な一方で、商慣習とかについてはまったくの門外漢。故に「なんすかそれは」と、失敗なんかもポコポコと。 そんな彼の体験談。はてさて、今回の話やいかに。

Webエンジニアの体験談

 とある企業さんにて、予算策定システムなるものを手がけた時の話です。

 もともとは他の人が担当していたシステムで、一部に関してはコーディングが終わって最終工程であるテスト待ち。そんな状態のものをボクSEフトシめが引き継ぐことになりました。

 まあ特記すべきこともなくですね、淡々と引き継いで、淡々とテストを終えて、さあお客さんとこで説明だってことになったんですよ。ところが、話せば話すほど、目の前にいるお客さんの表情が曇るわけです。むむむ…って顔になってくわけです。
『なんかヤなよかーん』

 頭の中の救難信号がピッピカピッピカ点りまくるわけです。

「あのねぇ」

 重々しく口を開いたお客さんは、業務フローについての説明を問い質しはじめました。

 なんでそんな段取りになっとるのかと。

 誰がそんな指示を出したのかと。

 この時点で、お客さんが本システムに合点がいってないのは明らかで、つまりは『無事に帰れそうもないな』と背中にじんわり脂汗がにじむ僕…となってるのも、実に実に明らかなのでありました。

 目の前にいるお客さんは、この会社の役員さんでした。つまり実際に予算を管理・策定する側の人です。このシステムを実際に使うことになる、ユーザーさんでもありました。

 ところがウチの前任者が話を進めていたのは、先方の技術担当部の方みたいだったのです。

 そこで取りまとめた設計書。役員さんの話に照らし合わせて確認すると、中身はまるでこれまでの慣習にのっとってません。
「ウチはそんなボトムアップ式で予算決めしたりはせんからねぇ」

 今目の前で動いているのは、まぎれもなく「ボトムアップ式積み上げ型予算策定システム」とでもいうもの。しかし役員さんが言う内容は「トップダウン式割り振り型予算策定システム」とでも言うべきもので…。
「結果がたとえ同じになったとしても、意志決定の流れがひっくり返っているものは使い物にならんよ」とトドメの有り難いお言葉。

 当然のごとく、システムは作り直しとなってしまいました。前提がひっくり返っているので、プログラム的に流用がきくものも皆無。

 まあ、プログラムが流用できないくらいにフローが違っちゃってるんだから、「使い物にならん」という役員さんの言葉も説得力があるといいますか…。
「客先でのヒアリングは正確に」でお願いします。泣くのは作る人なのです。トホホ。

そもそも予算の策定に「ボトムアップ」ってあるんですか?

というと?

だって、会社として最初に決まってる予算があるわけだから、それを各部署に割り振るだけじゃないのかなーと。

あー、んっとね、予算というのには「売上」と「費用」があるのよ。

へ?「売上」?「費用」?

ふむ、あいかわらずいい感じにバカですね。

ぎゃふん。

「売上」ってのは、売上目標とか、そういうの。「費用」ってのは経費的なものだね。その売上目標を達成するために、必要な費用はこんな感じ…みたいなね。

な、なるほど。それじゃ、トップダウンでえいやと決めちゃうとは単純に行かなそうですね。

うん、一番多いのは折衷型だろうね。

「セカチュー」?なんですか、会社の真ん中で愛を叫んだりするわけですか?

アホかー!!

ひぃ。

「せ・っ・ち・ゅ・う・が・た」。両方の間を取った、ちょうどいい案配のやり方ってことだよ!!

お、おお、なるほど。トップでもなくボトムでもなくミドルなわけですね。ミドル……アップでもなくダウンでもない?

……。つまりトップが予算編成方針で、今年は売上いくらで利益をいくらを目指すぞと。場合によっては、ざっくり各部門の目標値みたいなのも出たりしてね。それを各部門が受けて、計画を作って上に戻す。結果的に予算計画は、それらを積み上げる形になる…と。

お、なるほど。確かにトップがダウンで、ボトムがアップですね。せっちゅーですね、せっちゅー。

…ほんとにわかっとんのかいな。

商慣習についての解説
きたみりゅうじ

作家・きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。本業のかたわらWeb上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
URL:http://www.kitajirushi.jp/
※大好評 Webエンジニア武勇伝にも掲載!第10回 きたみりゅうじ氏

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