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Webエンジニアのために・・・ SEフトシ君の転ばぬ先の商慣習

トシくんは、IT専門学校を卒業後、中規模SIerにて働くコーディング大好きな若手SE。 プログラミングならなんでもござれ!…と強気な一方で、商慣習とかについてはまったくの門外漢。故に「なんすかそれは」と、失敗なんかもポコポコと。 そんな彼の体験談。はてさて、今回の話やいかに。

Webエンジニアの体験談

 とある大手エステティックサロンの、基幹システム開発が受注できた時の話です。

 なにせ大手相手ですし、しかも基幹システムときたもんだから、その開発規模といえばかなりのもの。当然設計にあたっては詳細な業務分析も必要となり、私SEフトシめも、その一員として細腕を細腕なりにがんばって振るう日々でありました。


 だってね、おっきな声じゃ言えないけど、でっかい規模だから受注金額がそりゃアナタ億は下らないわけですよ。しかも、これでしっかりパイプができれば、その後のメンテナンスでも継続的に仕事が入る。

 会社として、力が入るのも当たり前…という、そんなお仕事だったのです。


 さて、規模からいって、実開発を自社の人員だけで賄うのは無理がありました。なので開発業務をお願いできる、外注業者さんを見つけてこなきゃいけません。

 ちなみに担当は、ある年次処理を行うモジュールの作成でした。

 これには担当のシステム営業さんがあたりました。私たちが業務分析〜設計とはしるのと並行して、彼の方では「規模が規模ですから、ディスカウントよろしくね」なんて大人の駆け引きを武器に、付き合いのある外注さんと交渉開始。まもなく15%という割引額をゲットして、ホクホク顔だったらしいです。


 ここまでは、万事が万事、うまく運んでいたのです。

 規模の大きさが災いして、業務分析に思いの外時間が食われました。そのため、本当なら7月中に終わるはずだった設計も、ちょこっと翌月に食い込んじゃったもんで、外注さんへの発注時期もそれだけ翌月へと食い込んじゃった。


 

 でもまぁ、この段階でのずれはたいしたことないよ。

 きっちり予算はつくんだから、この後の進行がオンスケジュールで進めば良い話さ。

 そのために、漏れがないようきっちり検討に時間をかけたんだから。


 誰もがそう思っていました。私たちも、お客さんも、担当の営業さんも、誰もがそう思ってました。


 

「は?先月中に注文書くださいよって言ったじゃないですか」

「それなら15%引きで対応できると言ったんであって、その見積もり期限が過ぎてから同条件で発注するよと言われても無理ですよ」


 発注日が決まって営業さんが外注さんに電話連絡をしたところ、先方からはそんな答えが返ってきたそうです。この営業さん、見積もり期限がそんなに大事なものとは露知らず、「まぁ関係ないでしょ」とのんびり構えちゃってたのだとか。


 大幅ダウンとなった割引額を前に、まじめに顔面蒼白となった営業さん。その姿があまりに気の毒で、当時は思わず缶コーヒーの差し入れなんかもしたもんでした。

 …あんまり慰めにならなかったみたいですけど。

 怖いなぁ見積もり期限って。

というわけで「見積もり有効期限」なんですけども。

有効期限ね。まぁ、これを書かずに出す見積書ってのは普通ないわな。

あ、やっぱり。でも、「一応書いとくね」くらいのもんで、「一日過ぎたからもうダメね」なんてことはないような気がするんですけども。

それはそう。特別な事情がある場合を除いては、普通「受注できるなら受注する」になるからね。

ですよね。にも関わらず、今回のようなことになるケースって、どんな場合なんでしょう。

つまり、さっき言った「特別な事情」ってのがそれだ。月が変わると期をまたぐことになっちゃう時とか、今月の売上ノルマに影響する時とかね。

あー、車なんかで良く聞きますね。値引き必勝法とか言って。

そうそう、つまり「この月に売上がたつことに意味がある」という事情がある場合を除いては、まぁ普通「見積もり有効期限」なんかは、そう厳密には適用しないものよ。

あ、でもIT系の場合は、「人をアサインする必要があるから、今月中に言ってくれなきゃもう受けられないよ」なんてことがありそうですね。それか、「受けられるけど、単価の高いパートナーさんにふるしかなくなっちゃったから」とか。

うん、それは確かにありそうだね。今回の話の場合、もしかしてそーいうケースだったのかも。

でも考えてみたら、「ここまでに発注してもらわんとマズイですよ、見積もりの内容で受けられなくなりますよ」という場合、事前に伺いたてに来ますよね。営業さんならば。

営業さんじゃなかったのかもね。IT系だと営業兼任にされてる技術者さんとか多いみたいだし。

あ…、ありそうな話ですね。

商慣習についての解説
きたみりゅうじ

作家・きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。本業のかたわらWeb上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
URL:http://www.kitajirushi.jp/
※大好評 Webエンジニア武勇伝にも掲載!第10回 きたみりゅうじ氏

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