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第10回 後編 きたみりゅうじ氏 作家

今回は、SE出身の作家である、きたみりゅうじさんにお話をお伺いいたします。きたみさんは、フリーランスとして技術本やSE時代の体験を題材にした書籍を多数発行されており、多くの書店で売上ランク上位を記録しています。現在は5つのWebサイト、2雑誌で連載中。その面白おかしく感情表現豊かな独特な作品でSE以外の職業の人々にも幅広く知られています。取材会場は、千葉県の某駅近辺の寿司屋「銀蔵」です。テクニカルサポートとして、Webキャリアの前田道昂氏に同席をいただきました。

きたみりゅうじ 氏


1972年 大阪、寝屋川生まれ。もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありで、ほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でWindowsのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらWeb上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。遅筆ながらも自身のWebサイト上にて1コマ日記や4コマまんがを現在も連載中。

■オフィシャルサイト
「キタ印工房」 http://www.kitajirushi.jp/

■Web連載
「きたみりゅうじのブルルンバイク日記」 http://www.hobidas.com/blog/clubman/kitami/
「Dr.きたみりゅうじの"IT業界の勘違い"クリニック」
http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s01300.jsp?p=010
「きたみりゅうじのエンジニア転職百景」 http://tenshoku.mynavi.jp/eng/kitami/
「SOHOの家づくり」 http://blog.smatch.jp/kitami/index.html
「シスタン」 http://blog.ascii-business.com/kitami/

■連載@雑誌
「きたみりゅうじのCBブルルン生活」 http://www.clubman.jp/
「きたみりゅうじの聞かせて珍プレー」 http://gihyo.jp/magazine/wdpress

■著作
「SE・エンジニアの本当にあった怖い転職話 」毎日コミュニケーションズ
「シスタン 〜システム担当者を雑用係と呼ばないで〜 」 アスキー
「Dr.きたみりゅうじのSE業界ありがち勘違いクリニック」  講談社
「会社じゃ言えない SEのホンネ話」  幻冬舎
「パソコンマナーの掟 今さら人には聞けない「べからず!」集」 幻冬舎
「マンガ式IT塾 パケットのしくみ」  技術評論社
「SEのフシギな職場〜ダメ上司とダメ部下の陥りがちな罠28ヶ条〜」 幻冬舎
「改訂版 図解でよくわかる ネットワークの重要用語解説100 」技術評論社
「フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。」 日本実業出版社
「SEのフシギな生態〜失敗談から学ぶ成功のための30ヶ条〜」 幻冬舎
「新卒はツラいよ! 」幻冬舎
「フリーランスはじめてみましたが… 」技術評論社
「図解でよくわかる ネットワークの重要用語解説 」技術評論社
「WindowsXPネットワークスタートアップガイド 」技術評論社
「myShade3で描くカンタン3D 」ローカス
「こんなにできるDaisyArtミレニアムバージョン 」エムディエヌコーポレーション
「フリーランスのジタバタな舞台裏」幻冬舎

■監修
「ドット絵の教科書 」アスペクト

きたみりゅうじ氏最新刊
「フリーランスのジタバタな舞台裏」幻冬舎
2007年12月6日より発売中!!

川井: この頃はすでにホームページと かで漫画も公開されていたと言っていましたが、もう独立しようというお気持ちはあったんですか?それとも作家になりたいというのが 大きかったんですか?
きたみ: うーん、会社員を辞めたいっていうのはもうずーっとありましたね。朝起きるのが嫌だったんですよ。
川井: そうなんだ(笑)
きたみ: さっきまでの話だけだと、 この人すごくしっかりしている人という印象になっちゃうかもしれないんですけど、実はそんなことなくてだらっとしていたんですよ。遅刻常習犯だし、会社に入って少しはきっちりはしてはいたんですけど、納期さえ間に合えば、昼間だって何をしててもいいじゃんみたいな感覚でしたしね。サラリーマンとしての才能はなかったんですよ。誰が決めたかよく分らないルールに従うのは嫌でしたね。朝、遅刻して誰か困るかって、困らないですよね。でも会議に誰かが遅刻したら待ってないといけないので、困るんですよ。普通の社会人って逆なんで すよね。会議にはだらだらっとしてなかなか集まらないけど、朝だけはちゃんと来るんですよね。それが本当に嫌で、自分だけ有給が減っていくのに、会議に遅刻した人は有給減らないっていうのは納得がいかなかったですね。
川井: それ、本でも書いてありました ね(笑)
きたみ: でも、それって屁理屈なんですよね。やっぱりルールがあって、みんながそれを守る前提で、会社の倫理が保たれているんですよ。そういうのを自覚してはいるので、やっぱりサラリーマンは向いていないなって思ったんです。
川井: なるほど。じゃあ、出発点はサラリーマンが嫌だっていのうが大きいんですね。
きたみ: 大きいですね。サラリーマンをスタート地点として考えると、それが画を書く仕事だろうが文章だろうがプログラムだろうが、きっとなんでもいいんですよ。まず、サラリーマンを辞められる。で、自分がサラリーマンを辞めるためにどういうものがあるかなっていうのを考えた時に、使えそうなものが 画であったり文章だったり。そういう一方で自分の画は自分では好きなんだけど、これはどこまで通用するのか試したいっていうのもありました。
川井: ちなみに文章がうまい方ってかなり読みこまれていることが多いんですが、相当に読まれたんですか?
きたみ: 本は子供の頃にすごく読んでいたみたいです。小学校のときは図書室の本、全部読んじゃう勢いでしたから。学校の先生が家庭訪問に来た時に「この子はすごく本を読みますね。きっと将来は大物になるか犯罪者になりますね」って言ってくれたんです(笑) 母親はそれを聞いて怒ったみたいなんですけど、僕はすごい喜んでいました。どっちにしたってなにか大きなことをするってことだって(笑) 自分が親になってからは、自分の子供が将来、犯罪者かもっていわれていい気分はしないですから、当時の母親の気持ちもよくわかりますけどね。
川井: ジャンルで言うと、どういったものが好きだったんですか?
きたみ: 子供の頃でいうと、最初は「シートン動物記」や「ファーブル昆虫記」で、読み終わると「ギリシャ神話」とか読んでいましたね。それ以外は母親が買ってきてくれたやつで気にいってた「ころぼっくる」のシリーズを全部読んだり。今、考えると自然とかに関係する話が多かったですね。
川井: 小説とかエッセイとかにはいかなかったんですか?
きたみ: 中学や高校になると歴史ものを読んだりしましたね。大学のときはお金がなくて・・・
川井: 読まなかったんですか(笑)画 は描いていたんですか?
きたみ: ちょこちょこ描いていましたね。
川井: ガンダムなんかも?
きたみ: 小学校の頃なんかは、頼ま れてズゴックとか描いていましたね。
川井: やっぱり手先が器用なんでしょ うね。
きたみ: どうなんですかね。自分の画のことってよく分らないですけど、描けば誰でも描けるじゃないですか。丸と棒とで人を描くのとかできますよね。あれは僕の感覚として描けるってことなんですよ。記号として画を伝えられれば描けるってことだと思うんです。一時期燃えていたのは「いかに記号にするか」ってことでしたね。線は少ない方がいいっていうのが僕の考え方の中にあって、いっぱい線を足して、分かるものを描けるのは当たり前なので、線1本斜めに引いただけで、それが羊って言われて、羊に見えちゃったら凄いじゃないですか。こんな線で分っちゃうんだってくらい、いかに線を減らすかっていうのはありますね。最近は漫画的に見せようとするほど、線を足すほどに伝えやすくなるのが分かってきちゃったんで、逆行していますね。線を足して画でより分かるようにすると文字が減らせるんですよ。「新卒はツラいよ! 」を書いた時に、あれは一冊まるごと漫画だったんで、その時に変わりましたね。
川井: なるほど。そういうレベルでとらえているんですね。さて、そろそろ佳境という感じもありますが、私、この「フリーランスはじめてみましたが・・・」って本が一番面白かったんですが、少し、このあたりについてお聞きしてもいいでしょうか?
きたみ: この本は一番、賛否両論分かれる本だったんですよ。エッセイとして読んでくださる人と実用書として読んでくださる人がいて、実用書として読む人はすごく怒るんですよ。自分として、その本で言いたかったのは、フリーだろうがサラリーマンだろうが仕事の面でのプラスマイナスはなくて同じだってことなんですよ。フリーランスの方がいいって言えることが1つあるとしたら、プライベートと仕事との区分けを自分の意志で決めることができるところ、常にどちら側にも身を置けるっていうところっていうことだと思うんですよ。そういうことが言いたかったので、もうプライベートの話は絶対に必要で、僕にとってはプライベートの話に入ってからが本当に言いたいことだったんですよ。実用書として読んでた人たちはそこからがいらないって言っていましたね。
川井: それはフリーランスとしてはセットという方が自然だと思いますね。
きたみ: 版元の方もエッセイっていうのが出せる版元じゃなかったんで、実用書の皮を被せる必要があったんですよ。
川井: そりゃそうですね。技術評論社さんですもんね。
きたみ: それを並べた棚はどこかっていうと、ビジネス書の棚で、ビジネス書としてフリーランスを謳っていて、ビジネス書として読むなって方が無茶なんで、しょうがないんですよ。すべて人の言い分に尤もなことがあるんです。
川井: 本の中で、自分のポリシーに合 わない依頼についての話があったじゃないですか、結局お受けにならなかったとありましたが、あの時ってそうはいっても、結構、迷われ たんですか?
きたみ: ええ、迷いましたね。今でも時々迷いますよ。連載だと連載元から結構チェックが入るんですよ。最近はあまりないんですけど、時々、自分のすごくいいたいところ まで介入してくることがあって、それはその会社の媒体として言いたいことであって、自分がいいたいことじゃないってのがあるじゃない ですか。そういうときの折り合いのつけ方が難しいですね。我慢をするのか、自分の名前を使って他の人の意見を出す媒体にされちゃいか ねないから止めるか、さあどっちみたいなことになりますね。
川井: やっぱり、そこなんですね。
きたみ: 今の自分の立場って、自分 の名前で食べていくという状況なんで、自分の名前を他に曲げられちゃうと食えなくなっちゃうんですよ。
川井: 自分のブランドイメージってや つですね。
きたみ: ええ、それをどこまで許容 するかですね。
川井: 確かにこれは難しいですね。
きたみ: 微妙なのは、1つくらいい いかって許容しても、読んでる側は分からないんですよね。例えば、画を描くときにちょっと手を抜いたとしても分からないと思うんですよ。でも、分からないからといって、どんどん手を抜いたりしていくと、結構、分からないなりになんだか違うなって感じにはなってきちゃうので、どこかで歯止めをかけないといけないんですね。実際にイラストなんかでも最初の頃に比べると、ある部分では書き込む量を増やしているんですけど、ある部分では減らしていたりするんです。その減らす段階では、1度減らす画を描いてみて、それでどういう反応がくるか試して、「あ、分かんないもんだな」って思って、そうしてみたりとか。ちょっといやらしい話になりますけど、そうしていかないと回転させるためには、省力化させるところはしていかないといけないんですよ。ある意味、見えない部分のコストダウンですね。
川井: でも、ある意味、それもプロ意識ですよね。1人で生産できる量は限りがありますもんね。
きたみ: 例えば、「SEのフシギな生態」あたりでは、人にすべて影をつけているんですが、1つのイラストをこうすると、全部を同じようにしないといけなくって、結構手間がかかるんですよ。これをどこかのタイミングでもうやってないんですね。
川井: なるほど、これは気づかないで すね。
前田: これはトリビアですね。
きたみ: 今だと、カバーを書き下ろしでやらせてもらえるときは、足せるものは全部足しておこうって思うんですけど、そうじゃないものだと引けるものは引いておこうってって感じになっていますね。これをつけていることでまた、良し悪しっていうのも結構あるんですよ。小さいキャラのときにつけにくいとか、角度によっては自分でもどうつけていいのか分からないとか迷うんですけど、悩むくらいだったらなしにするっていう手もあるんですよね。
川井: なるほど、面白いですね。今ってもう自分から営業とか売り込みはせずに依頼だけで仕事が回っているんですか?
きたみ: そうですね。今はお声をかけていただいたものだけですね。
川井: 今は、何本くらいの連載があるんですか?
きたみ: 連載は、6本か7本ですね。
川井: 結構ありますね。それがまた定 期的に単行本になっていったりもしますもんね。
きたみ: そうですね。
川井: 今後は何かやりたいことってあるんでしょうか?
きたみ: 昔は結構考えていたんですけど、今は、あまり考えてないですね。僕の仕事のやり方っていうかスタンスとして、まず考えて決めたらやってみる、それでやってるうちは考えないっていうのがあるんです。それである程度やったらもう一度振り返って次はどうしようか考えるんです。ずっと考えていると進んでいるんだか下がっているんだか分からないんですけど、一度、方針決めたら、その結果が出るまでがむしゃらにやるんですよ。今はちょうどそのがむしゃらにやる時期ですね。
川井: なるほど、そういう考え方なんですね。
きたみ: フリーになった最初は仕事を取れるようにならなきゃいけないし、仕事とれるようになったら、技術評論社だけでなくていろんな版元で仕事取れるようにならなきゃいけないっていうステップがありますからね。最初はコンピュータ書を出さないといけなくて、それが運よく出せたんですけど、コンピュータ書の世界にどっぷり浸かるんじゃなく、どこでも自分の好きな本がやれるようにならなきゃって思ったんですよ。でもそうなると、書き下ろしの仕事だけじゃあ食えないんですよ。書き下ろしで食えるほどの知名度や人気は自分にはないっていうのがはっきりしたんで、これはもうギャンブルでしかないなって思ったんですよね。なので、サラリーマンに戻ろうかなって途中で考えた時期がありましたね。書き下ろしでなんとか生活費は回してはいたけど、それだけで精一杯になっちゃっていて、それだと自分が倒れたら終わりになっちゃうし、全然安定しないじゃないですか。いくらこの仕事が好きだからって、そんなのただのわがままじゃないですか。そんなことよりも家族を安心して食わせられるようにしてあげなきゃってことを考えた時に、これはサラリーマンに戻らないといけない状態なのかもってことを考えま したね。
川井: 苦労されているのは当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、そこまで考えていた時期があったんですね。それで、どんな風に乗り越えたんですか?
きたみ: まず、サラリーマンに戻ったらできなくなることってなんだろう?って考えました。まずは子供に会えなくなる。こんなに毎日、晩飯を家族と一緒に食うこともできなくなる。会社に通うと通勤時間もかかるので、1日の拘束時間は少なくとも14〜16時間になって、その間何もできないじゃないですか。じゃあ、その16時間をまるまる休みなく今の仕事にあてたら全然違うんじゃないかって思って、そこまで自分自身は頑張っていたっけって自問自答したらやってなかったんですよ。毎日16時間を書き下ろしにあてて、まわしていけば全然違う話じゃないのかなって感じたんですよ。勿論、実際はそんなことをしたからって、単純に書けるペースが倍増するわけじゃないんですけどね。でも少なくともそういうレベルでやってみたかって言われるとやってないんですよ。だったら、子供と会えなくなる選択をする前に、それを頑張ってやってみたらいいんじゃないかなと思って、そこから頑張りだしたんです。
川井: それが、さきほど言っていた「がむしゃら」ってやつですね。
きたみ: そうですね。でも、書き下ろしの仕事では食えないって分かっていたので、とにかくレギュラーの仕事で月々の収入が入るようにして、その上でその単行本化なり、年に1冊書き下ろしでやる分をボーナスに充てて、一切、本が売れなかったとしてもそれで十分、年収として、ペイできるようにしなきゃいけないって状況は変わらなくて、そう思ったからっていきなり連載なんてくるわけがないじゃないですか。だからまずは目の前にある仕事を頑張ろうとすごい反省したんです。そしたら取り組み始めた翌日に連載の仕事がきたんですよ。
川井: おー。そんなもんなんですね。
きたみ: それから、いくつか連載の話が入ってきて、それを頑張っているうちに他の版元さんとかデザイナーさんとか信頼できる人と出会えたりしましたね。今は、一緒に頑張りましょうって言ってくれている版元さんとか編集さんとかデザイナーさん全員の気持ちに応えていたら1年じゃ足りないんですよ。そうしたらもうよそ見している場合じゃないですよね。連載って方針は決まっていたし、まずは目の前のレギュラーの仕事をずっとやって、それからまた次のことを考え始めるという感じですね。
川井: 分かりやすいですね。
きたみ: 今、Webサイトをブログの方に移しているんですけど、それもその1つなんです。結局、書き下ろしをやっていたら、年に2冊が限界なんですよ。そうすると1冊出して、自分の本を読んで気にいってくれた人が、次の本はいつ出るかなって思ったら半年後なんですよ。忘れますよね。そうすると半年間は何かでつながなくちゃいけないんです。それが本当は連載でつないでいけたらいいんですけど、連載がそんなにあるわけじゃなかったんで、もっと自分が更新しやすいサイトに作り直して、気にいってくれた人が自分のWebサイトに来てくれて、そこを飽きないで見てくれたら忘れられないっていう仕組みにしていかないといけないなかったんです。
川井: なるほど。ある意味、戦略ですよね。メリハリがすごいです。なのに、きたみさんってとっても人間っぽいですよね。機械みたいでもないし、天才という感じでもないんですけど、あくまで人間っぽくてメリハリがしっかりしててって感じですね。
前田: 綺麗ごとだけじゃないので、話に説得力があって、本当に面白いですね。
川井: 最後になりますが、若手のエン ジニアに向けてのアドバイスをいただきたいと思います。
きたみ: 1つは結論を急がないことですね。
川井: その心は?
きたみ: 最近、大学の講演とかで呼ばれて話すこともあって、若い人と話す機会も多いんですけど、自分は、こんな若いときから将来のことなんか考えてなかったのに、しっかり考えている人が多いんですよね。賢いなって思う一方で賢すぎないかってのもあるんですよね。そんな調子で就職して、周りを見てみると、思ったより馬鹿に見えたり、こんなのは会社として間違っているとかいろんなことを感じると思うんですけど、目についたところと自分が今まで考えていたものとのギャップがあまりにも多すぎて、それでポンと先に結論を出しちゃって、でもそれ頑張ってみたの?みたいなことが起きるともったいないなって思いますね。少なくとも社会に出て、社会人っていう経験を積んでいない人たちなんで、今までどちらかというと綺麗ごとにしか触れてないと思うんですよ。ニュースなんかも本当に綺麗ごとしか言わないで、企業のモラルがどうのこうのとか言いますけど、それを真に受けて自分の会社を見て、「この会社いけないことしている」って悩んだりしますよね。そのいけないことしている会社を自分が変えればいいじゃんってところまで考えるか、いけない会社だから辞めないといけないって思うだけなのとは大きく違うと思うんですよ。そこを変えようって思えば、なんでそんないけないことをしなければならないかっていう理由や状況が分かると思 うんです。分かるようになって、さらに変えようとすれば、また次のものが見えるようになってくるんです。ここは駄目だとか、よくない っていうだけで結論を出しておしまいにしちゃうと、その先ってもうないんですけど、なんで駄目なんだろうとか。私ならこう変えられる かもしれないって自分流の何かを生み出そうとしているとどんどんいろんな知識が増えて、社会人としてのいろんなものが積み重ねていけ るんじゃないんですかね。
川井: 確かに、すぐに見切りをつけて辞めちゃうとか、愚痴ばかりこぼして頑張らないとかよくありますね。大変、いいお話をお聞きできした。あとは、これからプログラマになりたい人に向けて何かアドバイスはありますか?
きたみ: 業界によると思うんですけど、技術をとことん突き詰めていくことが必要なところに行く人は、もうその方面に突っ走るだけなのでお好きなようにと思いますが、そうじゃなくてお客さんありきでいかに便利なソリューションを作るとか、いかにチームとしてプロジェクトをうまくまわせることが求められる会社にいく人であれば、全部一緒だよって言いたいですね。文章書くのもプログラミングするのもお客さんの要求をまとめるのも全部必要なスキルだってことは同じだよっていうのが僕の思いなんですね。文章も最初に章立てがきちんとできないと支離滅裂なものになるんですよ。どういうテーマがあって、それをどういう章立てにして、どう伝えていくかっていうことを最初に整理しないと全体として筋が通らないものになってしまうんです。お客さんの要求も、まずテーマを見つけて、そのテーマに沿ってどういう順番でそれを提供するかという章立てを整えることで、お客さんもシステムのいい悪いを判断できるようになるし、お客さん自身の中ではっきりしていなかったものが、「あ、そいうのが欲しかったんですよ」みたいな話になったりしますよね。プログラムもやっぱり一緒で、作らなきゃいけないシステムがあれば、メインとしてまずテーマがあって、どういう機能をどういう順序で実装していかなきゃいけないとかってことを整理するのが大切なんですよね。今のオブジェクト指向系になると複雑になるんですけど、昔のやつだと、この機能を作りたいからこの機能ばっかり見て いるとか、そうやっちゃうとそこだけでかくて大変なプログラムができたりとかするんですよ。テーマを作って、全体が流れていくときにどの行を抜き出してもその先っていうのが、同じくらいの大きさだったり複雑さだったり、そういうようにばらけさせることで、作業も分 担しやすいし、プログラムとしてまとまりがあると読みやすくなるんです。で、読みやすくなるので、C言語でいう一番上のメイン関数を呼び出してみると、それで1つの文章ができあがるんですよ。その文章が章立てになっていて、各章を見るとまたその中が章立てになってて 中身が分かる、それでそれ以上分けられないものが最後に残るって感じになるはずなんですよ。ですからどの仕事も、テーマを決めて、章立てにして、それをばらけさせるっていう意味では本当に同じだと思うんですよ。それができれば、何をやっても綺麗にまとまるんですよ 。綺麗だと見やすくて分かりやすいし、分かりやすいと、人の出入りも楽になるんです。例えば、思わぬバクがでて、ここで工数が遅れそうだから、一時的に人を増やして対応しようとしてもそういう造りであれば、すぐに対応できるんですよね。そういうことができるような スキルを磨くためには、やはり相手が何を欲しているのかをどう読み取るかとか、どう伝えれば相手に分かりやすいかだとか、そういうことを日頃から考えていないと分かりやすいコードにはならないし、お客さんの要求をくみ上げられないですよね。プログラムが書ければい いからって、それを見ない人っていますよね。そうじゃないんだよって思いますね。そこを磨くとなんでもできるんですよ。そういう人にプレゼンを作らせると、聞きやすくて見やすいプレゼンを作りますからね。そういう志向のない人にプレゼンを作らせるとやたらとアニメ ーションばかりのプレゼンを作ってきますね。最初にそういう流れを整理する習慣をつけると、プログラミングの場合、気持ちの切り替えができるようになるんですよ。最初に整理してそこがもうぶれないって自信ができると、ここを抜き出してこの関数を組んでいる間はこれ に集中していても絶対に他には影響を及ぼさないっていう自信が自分にできるんですよ。そうすると狭い範囲に集中できるので、全体が把握できて、ちゃんと目の行き届いた品質の高いコードが書けるんです。そういう品質の確保されたコードをくっつけていくと全体として当 然、品質の確保されたものが出来上がりますね。何も整理しないで書き始めちゃう人は、ここでいつグローバル変数を作ったんだっけみたいにコードを書き始めちゃって、そもそも今どんな変数を使える状態にあるんだっけってことも分からなくなって自分自身で把握しきれな くなっちゃうんですよね。それでいろんなところで整合性がとれなくなって、最後の最後で動かないってときにはどこから手をつけていいか分からないですねってことになっちゃうんですよね。なので、最初に整理するっていうのは本当に大事ですね。
前田: 小学生のときの作文にちょっと似ていますね。思いついたことを、がーって書いちゃうみたいな(笑)それでわけの分からないと ころで終わっちゃうんですよね。でもテーマを絞ってこれくらいで書きなさいって言われるとそこそこ書けたりとか。それに似てますよね 。
川井: 箱ができていると強いですよね 。自分の中で、絶対に間違えないっていう安心感がありますからね。
前田: 1つお聞きしてもいいですか?先輩や上司がきたみさんみたいな発想だったらいいと思うんですけど、必ずしもそうじゃないで すよね。プログラマって結構、ついた先輩に影響されると思うんですけど、そのあたりはどう解決したらいいと思いますか?
きたみ: よく先輩の影響がどうこうって話も聞きますが、自分がちゃんとしていれば跳ね除けられるんじゃないですかね。確かに先輩にはお世話になりましたけど、プログラ ミングでどういう書き方が綺麗だとか、それは最終的には自分で考えたことですから。自分がテストしてすごい苦労したから苦労しないコードってどんなものなのかなとか自分が後で読みやすいコードってどんなものかなとか、自分なりに作っていって、あ、こういうものだな っていう感じでできてきましたね。もし、先輩が読みにくい汚いコードを押し付けてきたとしても、「読みにくいですよね」とか「僕は真似しないですよ」って平気で言っちゃいますよ。そういうのを突っぱねられないのは、その人に依存したいってことなんですよね。なんか あったら助けて欲しいとか敵にしたくないからっていって呑んでしまう。それは突っぱねられない人が悪いんであって、先輩のせいというのはちょっと違いますよね。
前田: なるほど。原因というか要因は自分に置いて考えるってことですね。
きたみ: 愚痴は全然いいと思います よ。それはただのガス抜きですからね。ただそれを自分の言い訳にしちゃうとちょっと違うんじゃないですかね。
川井: なるほど。こちらも本当にいいお話ですね。今夜は本当にありがとうございました。
きたみ: いえいえ、こちらこそありがとうございました。
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