ホーム > Webエンジニア武勇伝

サービス&ソリューション

第24回 サイボウズ・ラボ株式会社 蓑輪太郎 氏
ハンドルネーム:ひげぽん/higepon

今回は、ひげぽん(higepon)こと、サイボウズ・ラボの蓑輪太郎さんにお話をお聞きしました。蓑輪さんがブログで、「Webエンジニア武勇伝」の宮下尚さん記事を取り上げていただいたのを発見しまして、是非、インタビューをということでお願いし、今回の企画が実現いたしました。IPAで未踏ソフトウェアに採択され、スーパークリエータの認定もされているにも関わらず、謙虚で本当に人柄が素晴らしい蓑輪さんのお話を存分にお楽しみください。取材は、ユニークさで知られるサイボウズ・ラボのミーティングルームをお借りいたしました。


蓑輪太郎 氏

  • 慶應義塾大学 理工学部 物理学科 卒業
  • 某大手企業のシステム開発会社 入社
  • グループ会社向けの Web サービスの開発を担当
  • 2002年:
  • - 趣味でオープンソースOS Monaの開発を始める。
  • - OS開発の知識が一切ない状態から多くの人に助けられ開発を進める
  • 2005年:
  • - システム開発会社 退社
  • -株式会社 はてな 入社
  • - RSSリーダー はてなRSS、動画サービス Rimo などの開発
  • - MONA 2ちゃんねる発祥の手作りOSを執筆
  • - Open Source Conference Tokyo/Spring にて Mona の展示
  • 2006年:
  • - IPA「未踏ソフトウェア創造事業」採択
  • - 採択テーマ「Mona OSにおける次世代Schemeシェルの開発」
  • - オープンソースマガジン連載「ハッカー養成塾」にて「ハッカーへの遠回り」を執筆
  • - Open Source Conference Tokyo/Spring にて Mona の展示
  • 2007年:
  • - IPAにより「天才プログラマー/スーパークリエータ」に認定
  • - Open Source Conference Tokyo/Fall にてMonaの展示とライトニングトークで発表
  • - 株式会社はてな退社
  • 2008年:
  • - サイボウズ・ラボ株式会社入社
  • http://labs.cybozu.co.jp/
川井: パソコンとの出会いを教えていただきたいのですが。
蓑輪:初めてさわったのは小学生くらいで、近所の友達の家にお父さんが仕事で使うPCがあって、信長の野望とかゲームができるのがうらやましいなぁと思ったのが始まりですかね。あとは、小学校のときに放送委員だったんですが、放送委員の部屋に、たぶんMSXだったと思うんですが、あまり使われていないパソコンがあって、勝手にそのパソコンをいじってみたら、お絵かきソフトみたいなのが出てきて、それで猿の絵とか描いてみたりしたのが最初の体験だったかなぁと思います。
川井: じゃあ。ほんと興味本位で触ってみたっていうのが最初だったということですね。
蓑輪:そうですね。
川井: これが、小学校のときですね。なんか、そのときにおもしろそうだなぁとか、興味がわいたなぁとかですか?
蓑輪:純粋にそのころは僕はファミコンをなかなか買ってもらえない子供だったので、ゲームができるものっていう目でしか見てなかったですね。厳しかったのか、どういう教育方針かはわからないんですけど、親からは「ゲームっていうのは人が作り上げた制限された世界の中で、遊ぶもので、そんなのやって面白いの? 世の中にはもっと面白いものがあるんじゃないの?」みたいなことを言われていたんですよ。大人になってから考えると、言いたかったことは分かるんですけど、子供の頃は分からなくて「そんなこといっても僕はマリオやりたいんだよ」みたいに思っていたんです。
川井: 素晴らしいお言葉だと思うんですが、お父さんはどんな方だったんですか?
蓑輪:国立大学の教員をしてまして、そういう関係もあってそういうこと言っていたのかな?と思います。
川井: 哲学的な話を子供の頃からされていたんですね?
蓑輪:そうですね、物理の先生なので、世の中のいろんな物事の仕組みとかを知るほうが楽しいんじゃないの?っていう意図だったんだと思います。
川井: なるほど。で、ゲームの箱でしかなかったものがどんな感じに変わっていったんですか?
蓑輪:その後、ファミコンはなかなか買ってもらえなかったんですが、パソコンはなんとか交渉して、確か、中学校の終わりか高校生くらいの時にEPSONのPC98互換機を買ってもらって、それで念願のゲームをしていました。
川井: 念願のですね(笑)
蓑輪:そのゲームとかも親が厳しかったので、土日に1時間ずつとかしかできませんでしたね。
川井: それは集中しますね(笑)
蓑輪:そうなんですよ(笑) なので、平日はパソコンがあってもあんまり触らないじゃないですか。でも、ゲーム以外の事ならどうやらやってもいいらしいぞってことで、BASICでちょっと画面に円を出して動かしてみたりとかっていうのはやっていましたね。
川井: なるほど。
蓑輪:あとはその頃に、C言語っていうプログラミング言語に一回チャレンジしてみたんですけどポインタっていう概念がまったく理解できずに挫折したことがあるんです。入門書とか買ったんですが、まったく意味がわからなくて・・・。僕が出会う優秀なハッカーの人たちはだいたい中学、高校ぐらいのときにPC98でDOSを触っていて、「あの頃はグラフィックのあれこれをやってた」とか「BIOSで呼び出してた」とか「Cであれを書いてた」とか言うんですが、僕は地頭のよさがなくて、「こりゃわからん」ってなって、すっぱりあきらめてしまって、結構ゲーム機になっていましたね。
川井: 「ポインタの概念でつまづいた」すごく具体的ですね(笑)
蓑輪:ポインタっていうちょっと理解が難しい概念がありまして、本なんかでは、それを色んな比喩で学習させるんですね。例えばポインタを箱に例えて、箱に物が入ってますみたいな図が書いてあるんですが、ほんとにまったく意味がわからなくて(笑) なんていうんですかね・・・初めて分数の掛け算に出会った時に説明を受けないとまったく解らないじゃないですか。そんな感じで、これは自分の世界とは交わらないって世界だったんですね。
川井: なるほど。じゃあ。高校の間は土日1時間くらいたまにつけてゲームで遊んでいたという形になりますかね。
蓑輪:そうですね。
川井: その後、大学はどういった学部に進んだんですか?
蓑輪:理工学部です。
川井: 理系に行きたいと思った理由とかって何かあったんですか?
蓑輪:父親の影響もあってか、物理の研究者になりたいと思ったんです。それで、入ったんですけども、理系の学生なので確かパソコンが必要になった時があって、親に買ってもらってしばらく放置していたんですが、4年生になると研究室に配属されて、そこで1人1台のパソコンが支給されて、それからちょこっとずつプログラミングをするようになりました。
川井: 4年生になると1人1台なんですねぇ。
蓑輪:研究室って行くと研究しないといけなかったり、助手の人と議論しないといけなかったり作業を命じられたりするんですが、パソコンに向かっていると、どうもこの人は忙しそうだって見えるわけです(笑) 僕の席は画面が窓を向いていてパソコンで何をやっているのかは見えなかったので、なんとかパソコンをして仕事を振られないようにしようとか考えていたときに、その頃ちょうど流行りだしていたブラウザで動くJavaAppletを使って、オセロとか作っていたんですが、それがプログラミングを本格的に始めたきっかけですね。
川井: その頃は本も見ずにやっていたんですか?
蓑輪:その時はインターネットを利用して調べていました。
川井: じゃあ。ハッカーって言われる方としてはちょっと遅めなんですねぇ。
蓑輪:そうですね。だいぶ遅いですね。
川井: 最初から仕事ではプログラミングをしようと思っていたんですか?
蓑輪:そうですね。物理の大学院に行こうって決めていたんですけど、ギリギリになって「あれ?別にそんな物理好きじゃないな」って事に気がついて、それで、だいぶ遅めの就職活動だったんでめぼしい所はあんまりなくて、大手グループのシステム会社に入って、プログラマというかシステムエンジニアみたいなことをやっていました。
川井: 何年くらいですか?
蓑輪:何年ですかね。4年くらいですね。あんまり覚えてないんです。
川井: でも、4年もがんばられたんですね。
蓑輪:そうですね。まず、入って1年目は色んなこと学べるので楽しいじゃないですか。2年目くらいになってだんだん周りの人の力量とかもわかってきて、でも、まぁある程度裁量をまかされてくるので仕事もわりと楽しくて、でも、社内だけではどうも技術は身につかないなっていうのが分ってきて、オープンソースでOSを作ってみようかなっていう思いに至ったんです。
川井: 大手企業に行くと、基本的にはコーディングは社内ではやらないんじゃないですか?
蓑輪:そんなこともなくて、同期が20人くらいいたんですが、その中で僕を含めて3、4人は コードを書くような部署で、僕は割とそういう部署に行きたいといっていたので、めぐまれていて、コーディングはしていましたね。
川井: web開発をやられたんですか?
蓑輪:そうですね。大きなグループの会社に入ったので、関連会社向けの社内システムを作成していました。営業さんが見積もりを取るためのwebの画面とか、ボタンを押すとPDFで出力されたりするものとか、あとは発注画面とかですね。
川井: なるほど。そういう環境の中で技術力をつけるために個人的に、オープンソースのほうに行くわけですね。なるほど流れがよくわかります。
蓑輪:はい(笑)
川井: それって自分でOSを作っちゃおうみたいな話だと思うんですが、普通の人にはできませんよね? この時点で2年くらいじゃないですか? どのへんでそういうことができる実力がついたんですかね?
蓑輪:そうですね。そのOSを作ろうと思って2chに書きこんだときは、正直なところ、OSを作る力量はなかったんですよ。2chの人たちにも「そんなんじゃ無理だ」みたいな感じで言われました。でも、一歩ずつ階段を登るみたいな感じで、OSを作るには、まず最初にフロッピーディスクとかCDとかから起動しないといけないんですけど、起動するためには何が必要なのかというのから調べて、どうもアセンブラが理解できないといけないっていうのが分かって、サンプルのソースコードを検索して調べてみてみるんですが、さっぱりわからないじゃないですか。そうすると一行一行自分なりにマニュアル読みながら、こういう命令が発行されているっていうのを書いてみて、「こうこうやってみたけど、やっぱり分からなかったよ」って2chに書くと「それはこういう背景で、こういう動作になるよ」と親切に教えてくれる人がいて、割と自分で学習しつつ、分からない部分はフォローしてもらって成長させていただいたところはありましたね。
川井: サンプルコードを一行一行丹念に読んで、分かんない所を聞いて、それに対するレスポンスで勉強するというのを繰り返ししてきたという感じですね。
蓑輪:そうですね。特に最初の頃はそういう感じでしたね。
川井: これは、ブログでコメントいただいた「宮下尚(himi)さんの武勇伝」に出てくるEmacsのコードを頭から全部読み続けて、6ヶ月かかってやっと分かったっていうのと似てる感じですね。
蓑輪:でも宮下さんとか他のハッカーがすごいなと思うのは、自力でやられている点ですね。僕は人に助けられまくっていて何とかやれてきたので、個人の能力としてはそんなに高くないと正直自分では思っていますね。
川井: でも、それも含めての能力だと思いますけどね。
蓑輪:いえいえ。とんでもないです。
川井: そこはでも、対照的で面白いですね。
蓑輪:僕も、一人でできる力があればもっと違う方向に行っていたと思うんですが、ほんと自分は頭が悪いなぁと思うことが多いです。
川井: 蓑輪さんがそんなこと言ったら他の方が怒りますよ(笑)
蓑輪:いえいえ(苦笑)
川井: じゃあ、そういう繰り返しを仕事が終わって家に帰ってからやっていたんですねぇ。やっぱり好きだからできるんですよね?
蓑輪:そうですね。あとは多分、仕事で欲求不満がたまって、帰ってから発散するみたいなのは、あったと思いますね。
川井: やっぱり、やりたいことをやりきれないみたいな欲求ですかね。
蓑輪:そうですね。
川井: じゃあ、自然と帰るとパソコンつけてそこに向かってっていうのがごく当たり前なことなんですね。
蓑輪:それは今でも変わりませんけどね(笑)
川井: やっぱり、根本は好きなんですよね。仕事で疲れて家でゆっくりしたいって人もいるじゃないですか? そうではなくて、常にパソコンとたわむれていたいっていうか。
蓑輪:知的好奇心を満たしたいというのがあって、その対象が今はコンピュータなのかなと思っていますね。「今日はひとつも新しい発見なかったな」っていう日の夜はブルーなんですよね。「今日、俺なんにも頑張らなかった」みたいな(笑)
川井: すごい言葉ですね。これなんかトップキャッチにしたくなるような(笑)
蓑輪:いやいや、やめてください(笑) 後で言おうと思っていたんですけど、僕は自分が、能力が低いとか頭が悪いのはよく分かっていて、それを補うための工夫みたいのでなんとかやってきたんで、そういうのをうまく伝えられればなぁ、と思っています。
川井: 確かに一芸に秀でるのっていうのはすごく難しいことだと思うんですよ。なので今のお話ってよく分かりますね。高橋征義さんも同じようなことをおっしゃっていまして、 彼もすごいなと思うんですが、その彼が、Rubyではトップハッカーにはかなわないので 「文章を書く力がある」ということを併せ技にして、一流に近づいたっておっしゃってましたね。
蓑輪:高橋さんでもそうなんですね。プログラマの世界は、本当に力の差がわかりやすいんですよ。あの技術者は自分よりすごいっていうのがぱっとわかるんで、「あぁ、俺って駄目だぁ〜みたいな」感じで結構打ちのめされるんですね。
川井: なるほど。そうですよね。話を戻しますが、仕事しながら欲求不満を解消しつつ、OSを作り上げたんですね。
蓑輪:作り上げたっていうか、動いてはいますけどまだ未完成でまだ続けているっていう感じなんですよ。
川井: この「MonaOS」の発想っていうのはどういう所から生まれたんですか?
蓑輪:OSの設計ですか? それとも作ろうっていう意味ですか?
川井: 作ろうって思った方のことです。
蓑輪:作ろうって思ったのは、プログラミングの勉強をするにあたって、題材がほしかったんですね。そのときに、一般の人がよく使うであろう物のほうが作りがいがあると思ったんですよ。なので、例えばブラウザとかメーラーとかを考えた時に、よく考えればOS作ったら多くの人に使ってもらえるんじゃないのかって思って、今思えば恥ずかしいですが、 そこでOSっていう題材を選んだんです。
川井: じゃあOSが作りたいっていうよりは目的が色々あってって感じなんですね。 どんなOSを作りたいとかっていうのは、そのときからあったんですか?
蓑輪:その頃はそういう思想はなくて、とにかく動くものが作りたいっていう感じでしたね。
川井: じゃあ、作っていく中で色んな思想とかこういうのが作ってみたいって感じだったんですね。まず、作っちゃってみるのもありですよね。ご自身としては作ったものについての思いというか、これをどうしたいとかありますか?
蓑輪:よく言うんですけども、プログラマは自分が作ったツールの上で生活できると幸せなんですね。Emacsとかもまさにそうなんですけども、自分の作ったOSの中でまず自分が生活できることを目指してがんばっているんです。でもまだ道のりは遠いなぁって感じですね。
川井: すごいですね。本質的にすごい言葉を端的におっしゃるので、すごくわかりやすいですね。
蓑輪:いやいや。知り合いでお絵かきツールを作っている人がいるんですが、その人も自分が漫画を書く人なので、自分が書きやすいようなツールを作って、そのツールの上で生活したいっていうのがあると言ってたんです。そういうモチベーションが結構大きいですね。
川井: なるほど、よく分かりました。実は本を購入してあって、サインをしていただこうと思ったんですが、今日間に合わず(笑) 今度次サインを・・・(笑)
蓑輪:勉強熱心ですね(笑)
川井: いえいえ。買って勉強してるかっていうとそうでもないんですけどね。つんどくっていうのが(笑)
蓑輪:(笑) つんどく、分かりますよ(笑)
川井: その後ですけど、転職をって感じになると思うんですが、ご決断したきっかけとかポイントをお聞かせいただければと思います。
蓑輪:システム開発の会社での想定されるキャリアパスって、もう人と物とお金の管理にシフトしていくんですよね。なので、エンジニアのエキスパートとしての道は残っていなかったのと、そろそろ小さいプロジェクトのリーダーを任された時期で、その後はそれこそ工数管理をやるみたいな仕事をすることが控えていまして、ちょっと自分がやりたいことじゃないなあって思ったので転職を決断しました。
川井: 「はてな」を選んだ理由ってのは?
蓑輪:色々受けていた中で、社長と会ってみて面白そうだなって思ったのが一番の決め手ですかね。あとは、確か面接のときだったと思うんですけど、「一日中好きなコードを書いていたいんですよ」「とにかくコード書きたいんですよ」って言ったら「書かせてあげるよ」みたいなことを言われて(笑) その頃は一日コードを書いていればいいだけの生活っていうのがなかったんです。例えばExcelでドキュメント書いたり、PowerPointでなんか作ったり、ミーティング出たりとかではなくて、一日中コードかける環境を用意するよって言われて、それなら魅力的だってことで選びましたね。
川井: じゃあそういう生活のスタートってことですね。 実際入ってみてどうでしたか?
蓑輪:最初の1年くらいものすごい刺激的で楽しかったですね。 周りが自分より完璧に優秀であるっていう状況で働くと、学ぶところも多いですし、とっても楽しいんですよ。
川井: 「ハッカーへの遠回り」って部分に書いてありましたね。周りが全部優秀でっていう環境だと、引いちゃう人は引いちゃうと思うんですけど、やっぱりそこに入ってみるっていうのが重要なんですよね。
蓑輪:そうですね。やっぱり、インターネットが広まって、すごい人のブログとか読むじゃないですか?ブログの行間にすごさがにじみでているんですけど、実際に会ってみると、すごさの質がちょっと違って「あ、こういう人間的な部分でそのすごさってできてるんだ」っていうのが見えてきたりするのが結構楽しいんですよね。
川井: 実際、普段ブログとかでしか知らなかった人が目の前にいて、その人から刺激を受けられているんですね。
蓑輪:そうですね。ブログだけ見ていると、毎日のように技術記事をあげていたり、すごいコードを書いていて、鉄人みたいじゃないですか。でも実はそういう人も隣で「あー!!わかんねー!!」とか言って弱音を吐いていたりするんですよ(笑) そういうのを見ると、何か自分でもやれそうだなっていうのがわかるんですよね。
川井: 武勇伝にも登場していただいた小山哲志(koyhoge)さんがおっしゃっていたんですが、「IT系の技術雑誌が同人誌に見える瞬間がある」っていうようなことがあるらしいんですよ。雲の上の人が書いてるっていうものが、そこに参加することによって同人誌みたいに感じるようになったそうなんです。それに似ているかもしれないですね。
蓑輪:確かに、確かに。知り合いが書いている事が多いですしねぇ。しかも、「締め切り間にあわねー!!」とか隣で聞いてたりするんで(笑)
川井: 意外と、遠いようで近い世界なんですねぇ。
蓑輪:そうですね(笑) 僕はそういう所は結構若い人とか他の人にも伝えたくて、自分の日記では弱音を吐くまではいかないですけど「おー。わかんねー!!」みたいな心境もわざと書くようにしているんです。自分を格好良く演出するのであれば、過程を出さずに結果だけをポンと出してやれば「おー。Coolだ!!」ってなるんですけど、悩んでいる過程とかも全部外に出してしまえば「あの人もこう悩んでいたんだな」ってあとで検索とかでたどりついたりするじゃないですか。そういうのがあって、多少弱い部分もブログには書こうかなみたいなのはありますね。
川井: なるほど。それってほんと。親近感がわくというのはありますよね。
蓑輪:そうですね。
川井: その後、「はてな」では色々と開発したと思いますが、印象に残った仕事とかありますか?
蓑輪:はてなRSSっていうRSSリーダーを任された時とか、そのあとにRimoってサービスをやった時はやっぱり、自分に任される自由度がすごい上がったので、もちろん責任も伴いますけども、そこはすごく楽しかったですね。むしろ、そういうポジションを目指して、なんとかこういうものができてきたって所がありますね。僕はどうも人に指図されるのが嫌みたいなので(笑)
川井: (笑)。なるほど(笑)
蓑輪:なので、例えば極端な話、今日はこの仕事をしなさいって言われるような職業の人もいるわけじゃないですか。僕はもう絶対そういうのは耐えられなくて、「2週間でも3週間でもほっておいてくれ。結果は出すから」みたいな感じでやっていましたね。「はてなRSS」の時とかは、特にそうなんですけど、ユーザとの対話みたいなところも任されるんですね。例えば、新しい機能を作りましたっていう告知をする部分も自分で書きましたし、不具合を報告してくれるユーザさんとやりとりをして、その不具合を解決までもっていくとかそういうのも全部含めて任されていたので、それは結構勉強になりましたね。
川井: これは企画とかもされるんですか?
蓑輪:そうですね。
川井: じゃあ、企画から作るところから運用というか定着っていうんでしょうか、そこまで全部一気通貫でやるっていうスタイルなんですね。
蓑輪:そうですね。「こういう不具合がでてるよ」とか「こういう意見があるよ」とか、「はてなRSS」に関係する話があると、僕の所に来るって形ですね。
川井: じゃあ、ある意味プロダクトマネージャーみたいなことですね。
蓑輪:大げさに言うとそうですね。はい。
川井: でも、「はてな」でこういう仕事ができるっていうのは、面白そうですよね。
蓑輪:そうですね。
川井: あんまり他の会社では、ないかもしれないですね。
蓑輪:そうですね。Rimoの時とかは、特に本当にいちからWebサービスの立ち上げをしたので、それは楽しかったですね。何万人って人に使われるサービスを構想、企画段階から作り上げて、リリースまで持っていくのは非常に勉強になりましたね。
川井: これはどのくらいの期間で作ったんですか?
蓑輪:えーと。多分リリースされるまでは3、4ヶ月だったと思います。社員旅行でコンペみたいのがあって、そこに出すために、まず最初プロトタイプみたいのができてその後、これはよさそうだってことで開発が始まったんです。
川井: その辺の「はてな」の社内の事って、岡田有花さんのいるITmediaによくかかれてましたよね? リリース前に話しするくらいにすごく密接な関係だとか(笑)
蓑輪:(笑)。そうですね。あそこはお互いうまいって言うか(笑)
川井: 前、舘野祐一(secondlife)さんにその話を聞いたんですよ(笑)
蓑輪:あ、舘野さんですか。いつ話したんですか?
川井: 先週、代官山でお時間いただいてインタビューさせていただいたんですよ。
蓑輪:そうなんですかっ!! 彼、元気ですか?
川井: 元気でしたよ。
蓑輪:割と仲がよかったんですよ。
川井: 舘野さんも、そうおっしゃっていました。次の人をご紹介って言ったら。「higeponがいいって思ったんですけど、すでにインタビューが決まっているんですよね」って残念がっていました。
蓑輪:(笑)そうでしたか。
川井: 他に面白かった事とかポイントになるような話とかありますかね?
蓑輪:面白かったことは、 ものすごく小さな会社だったので、経営者がすごい近くにいるんですよ。その前は大企業だったので、正直「社長って名前なんだっけ?」って感じなんですよ(笑) 社員総会で社員が全員集まるとかになると「あれ?去年と社長の顔違うね?いつの間に代わった?」なんてのがあったくらいで(笑)
川井: (笑)なるほど。
蓑輪:それが、経営者が身近に感じられることで、経営者が何を考えて決断して、その結果、社員にこういうものが来てるっていう経路がすごくよく分かって、それがすごく勉強になりましたね。大企業だと、「新しい人事制度を導入します」とかってなると、どういう意図なんだろうとか、建前はわかるけど、奥底には何があるんだろうとか。お金がないのかなっていうのがぜんぜん分かんないんですけど、そういうのが全部分かったりして、会社経営が割りと身近に感じられるようになって、今までは、自分は絶対会社作るなんてことないだろうなって思っていたのが、会社を40歳くらいで作るかもしれない確率が、0%から0.5%に上がったのがかなり大きい影響でしたね。
川井: 経営ってのもありかな、みたいな感じですか?
蓑輪:そうですね。「会社ってこんな感じなんだ」みたいな。
川井: 確かにそうですね。大企業に行っていると、学校に行っているような錯覚を起こすことありますからね(笑)
蓑輪:そうですね。
川井: これは会社を変わったことによる大きな発見ですね。
蓑輪:そうですね。
川井: さきほど、「何か新しい発見しないと」っておっしゃっていましたけど、会社を変わってからも、きちんと新しい気づきを得てらっしゃるんですね。
蓑輪:いや、後からつじつま合わせればそうなるんですけど(笑) まぁ、たまたまだと思います(笑)
川井: これってあっちこっちで同じことを何回も聞かれてるとは思うんですが、改めて振り返ってみると「はてな」を辞めてしまわれたのって、どうしてなんですか?
蓑輪:うーん。難しいなぁ。端的に言うと、もっと好きなようにやりたいって感じですねぇ。やっぱり、小さい会社だし、社長の近藤さんの会社じゃないですか。なので、基本的には近藤さんが舵取りして、その時によりますが、近藤さんが細かい所まで指示を出すような会社なので、もう少し技術者として自由度が高い状態でやりたいなぁと思ったんです。
川井: なるほど。あくまでプライベートカンパニーですからね。
蓑輪:そうですね。
川井: 結構そういった意味では、ご自分でいろいろ転職先を探されたんですか?
蓑輪:そうですね。結構、インターネットというかプログラマが活躍できる業界って狭いのでそんなに候補はないんですね(笑) その時、サイボウズ・ラボの竹迫良範(TAKESAKO)さんと知り合いだったので、「ちょっと、遊びに行かせてください」みたいな感じで来たのがきっかけですね。
川井: じゃあ。あんまり広げるわけじゃなくて、ある程度こことここじゃないのかなという感覚だったんですね。
蓑輪:そうですね。
川井: 確かに、こういったラボみたいな所で稼動と完全に切り離して自由にやっていいよっていうところは少ないですよね。
蓑輪:そうですね。ほんとに少ないですね。
川井: 去年、一昨年くらいですと、リクルートのメディアテクノロジーラボも同じ動きで、あとはカヤックのBM11とかは稼動と完全に切り離されているって感じで動いてるみたいですけどね。でも限られていますよね。決め手はやっぱり自分の好きなようにできるって言う所ですかね?
蓑輪:そうですね。あとはやっぱり、とびっきり優秀な同僚が揃っているって、それが大きいですよね。
川井: なるほど。確かにそれは、そうですね。
蓑輪:ちょっと、その辺で雑談していても「なんてレベルの高い雑談なんだ」と思ったりしますね(笑)
川井: (笑) なるほどなるほど。
蓑輪:「はてな」とはぜんぜん質の違う優秀さですね。どっちがいい悪いじゃなくて、多分レイヤーが違うと思うんですよ。
川井: 具体的にはどう違うって感じですか?
蓑輪:「はてな」は完全にWeb寄りな会社で、例えば使ってる言語はPerlですとかRubyですとかなんですけど、サイボウズ・ラボの場合は、ものすごくCPUの命令に詳しい人とか、あとは組み込み系でプログラムをしたことがある人とか、数学的素養があってプログラムしてる人ですとか、あとは最近流行のJavaScriptを極めちゃっている人とかなんか、ちょっとそれぞれがものすごい強みを持ってとんがってる人たちの集まりなんです。
川井: なるほど。各分野の相当専門性が高くてその幅が広いってことですね。
蓑輪:そうですね。
川井: 「はてな」はWebって世界に集約されているって感じですもんね。
蓑輪:そうですね。Webの世界でとんがってる人たちがいっぱいいるって感じですね。
川井: 確かに、それはえらい違いですね。
蓑輪:僕もどっちかっていうとOSを作るくらいですから、自分ではWebエンジニアだとは思っていなくて、そういった専門性の高いレイヤーのエンジニアだと思っているので、結構今楽しいですね。
川井: 移られたのはいつでしたっけ?
蓑輪:今年の1月ですね。
川井: 本当につい最近ですね。
川井: IPAの未踏とかって、どういう人が選ばれるのかって想像がつかないんですよね。スーパークリエータに認定されるというのは、どういう基準でどういう人が選ばれるのかさっぱり分からないんですが、そのあたりについて教えていただけませんか。
蓑輪:僕もわからなくて(笑) まさか自分が選ばれるとは思わなかったですよ。未踏に採択されるとプロジェクトマネージャーっていう学校の先生だったり、偉い人の下でプロジェクトをやっていくんですけど、そのプロジェクトマネージャーの方が選んでくださるって感じですね。
川井: MonaOSが未踏に採択されてるってことですね。
蓑輪:僕は、MonaOSに新しい機能をつけるみたいな感じの開発でお金をいただいて期間で開発しているって感じですね。
川井: じゃあ。ある意味スポンサーがついて、公にこれを世の中で開発していこうっていうことですね。
蓑輪:はい。
川井: こういった方々ってどれくらいの人数選ばれるんですかね?
蓑輪:1回で10人未満くらいで、今まで何回かあるんで全国に100人くらいいるんじゃないですかね?
川井: でも、100人しかいないんですよね?
蓑輪:でもだんだん増殖してるんで(笑) たまたまタイミングやテーマがピッタリあっていたという感じかもしれません。
川井: いやいや、やっぱりすごいですよ。
蓑輪:この未踏ソフトウェアはエンジニア的には転機かなぁと思っていて、仕事をしながら別の仕事を引き受けたような感じになるんですね。「はてな」で19時、20時まで働いて、その後、寝るまでの時間と土日で開発をする、みたいな契約だったので、自分をいかにうまくコントロールしてコンスタントに働くかっていうノウハウをひたすら貯めた時期で、それが結構今の自分にとって役立ってるかなぁと思いますね。
川井: そこは、労働集約的にやられてたのか、生産性を向上することでやられたのかどちらですかね?
蓑輪:生産性の向上ですかね。例えば、大人になってから大分経つので、自分は頭が悪いとか、すぐ飽きてしまう性格だなとかが分かるじゃないですか。そういう時にどうやったら飽きないだろうかっていうのを考えましたね。例えば飴とムチ方式で、30分コードを書いたら15分くらい他の楽しいコード書きをしようとか、あとは、インターネットに繋がった状態で開発をしていて、気づいたらYahooのTopページを見てることがあったりとか、気づいたらmixiを見てることがあるので、わざとオフラインの状態、例えばスターバックスに行ってネットに繋がないで開発をするですとか。あとは、必ず仕事が終わった後なので頭が疲れた状態なんですね。仕事は仕事としてちゃんとやっていますからね。なので、すぐ疲れてしまうんで、頭が疲れたときはこれをやろうみたいなToDoリストを書いておくんです。必ずしも頭が冴えている必要がなくて、頭が疲れているときでもやれることって結構いっぱいあるじゃないですか。「あれこれについて調べる」とか「テレビの上が汚いから雑巾がけする」とかなんでもいいんですけどね。そういうことを書いておいて「頭が疲れてきたな」って思ったら、そのリストを見てこっちをやろうとかして頭をリフレッシュさせるとか。あとは、プールに行くと気分が変わるので、頭が疲れたタイミングでプールに行って、戻ってくると朝起きたときみたいな状態にリセットされててまた生産性よくできるとか、そういうことですね。
川井: 色々なコントロールの手法を身につけられたんですね。
蓑輪:そうですね。
川井: 確かにこれはいいですね。本当に、仕事のタスクを切り分けすることはやっていかないと生産性あがらないですよね。
蓑輪:そうですね。本当に頭が疲れている時って「次に何をやるんだっけな?」って事も忘れたりするじゃないですか。それを思い出すのに時間がかかったりするので、本当に頭が疲れている時は、1から10まで次やることをリストにしてから、頭からこなしていくとかやると多少は生産性があがりますよね。結構、無理やり働いてるって感じがしますけども(笑)
川井: すごいなぁ。これはわたしも参考になります(笑) よく、疲れていて、生産性の悪い仕事をしていると、文を何回も書き直していたりするんですよ。あるじゃないですか、書き直しても書き直しても、ちゃんと書けないみたいな。メール書いちゃだめなんだなって(笑)
蓑輪:あります、あります。そういう時は違うことやった方がトータルな生産性が高いってことがよくあるんですよね(笑)
川井: 仕事の量が増えたってことでそういうコントロールが必然と必要になって、そこでいろんなことを身につけられたってことですね。
蓑輪:はい。
川井: それもすばらしいですね。現在、MonaOSの他に、テーマとして何かご自身で取り組んでいる事とかあるんですか?
蓑輪:仕事ですか?プライベートですか?
川井: 両方含めてで結構ですが。
蓑輪:どっちもちょっとかぶっているんですけど、プログラミング言語処理系を作っていまして、「Scheme」っていうプログラム言語なんです。プログラミング言語っていうのは、ソースコードを書いてインタプリタで実行したりとか、コンパイルして実行したりとかするんですけど、そういう言語処理系って今まで遠い世界のことで、自分は絶対に作れないんだなって思っていたんです。でも、ある本を読んだのがきっかけで「あ、自分でも作れるんだ」ってことが分かったので、実用的なものを作ってみようかなってことで、その「Scheme」の処理系を今、書いていますね。
川井: これは、言語自体を作っているわけではないんですよね。
蓑輪:言語の仕様は決まっていて、それを動かすプログラムを作っている感じですね。笹田耕一さんがやっていることに近いです。Rubyの仕様はまつもとゆきひろさんが考えているんですけども、動くものは笹田さんが作っているみたいな感じです。
川井: なるほど。
蓑輪:結構、言語処理系に行くっていうのが、はまりポイントで、確か、Rubyのまつもとゆきひろさんか誰かがおっしゃっていたんですが、「エンジニアっていうのはだいたいOSを作るか、言語処理系を作るかに分かれる」らしいんです。私はどっちにも足をつっこんでしまった感じで、これは泥沼なんじゃないのかなとも思いますね(笑)
川井: なるほど、なるほど。
蓑輪:いや、ものすごく奥が深いんですよね。
川井: 目指されてるのは、どういうものなんですか? 例えばスピードをあげるとか?
蓑輪:そうですね。一応スピードは速いっていうのと、ゆくゆくはWebプログラミングが簡単にできるようなフレームワークを上にのせて公開したいなぁと思っています。最近ですとRuby on Railsとかありますけど、あんな感じですね。
川井: なるほど。ちなみに一番得意な言語は何ですかね?
蓑輪:得意な言語ですか。それは難しいですね。
川井: 何でもOKだと思うんですけど(笑)
蓑輪:いや。どれも中途半端なんです。(笑) C++かSchemeかどっちかですねぇ。
川井: ちょっと、今考えてる企画がありまして、トップハッカーの方々からはじめようと思っているんですけども「ハッカーズデスクトップ」というサイトを立ち上げたいと思っているんです。なかなか難しいかもしれませんが、机の上の写真を本当は一枚取りたいんですよ。どんなエディターを使っているのか、どんなパソコンとかどんなキーボードを使っているのかとかをデータベース化していきたいなぁと思っているんです。
蓑輪:ツールっていうのは物理的なツールですか?
川井: 物理的なツールでも、フォントとかパソコン上のツールでもいいんですが、今、何にしようかっていう項目の洗い出しをしているんです。これはエンジニアの誰に聞いても、「すごく興味がある」って感じなんですよねぇ。
蓑輪:確かに、キーボードとかは知りたいですね。あとは、椅子かな。
川井: 椅子のことは書いてましたね。
蓑輪:パソコン上で使うツールって、エディターって何を使ってますか?とか、僕も色んな人に結構聞いていますね。あと、この人のコードを書いてる風景を動画で見たいってのがあって、画面上でプログラムを書いてると「あ!何か今キーボードが怪しい動きした!!これ何?」とかっていうのがあったりとかするんです。あとは、ウィンドウが何個もあってどういう配置にしていてどういうときに何を使っているかとかも分かるとすごいうれしいなぁと思います。
川井: それも面白いですね。できれば、将来的にはそういうのを取り込んでいければと思っています。おそらく「ハッカーデスクトップ」っていうのに全部当てはまると思っているんですよ。
蓑輪:いや。面白いですねぇ。
川井: そのうち、みなさんが投稿できるようにして、自分と同じ物を使っている人を検索とか、コミュニティっぽくしても面白いかなぁと思っています。これって、真似ができるじゃないですか。
蓑輪:そうですね。じゃあ。ぜひとも写真と一緒に画面のスクリーンショットものせていただきたいですけどね。それがあるとないとじゃだいぶ違うと思うんです。
川井: ちょっと、一気にできないので、どっからはじめようかとか、まぁ。順番にやっていこうと思っています。
蓑輪:なるほど。いい企画ですね。
川井: すいません。話がそれて・・・
蓑輪:いえいえ。
川井: 「Scheme」の他にはなにかテーマはあるんですか?
蓑輪:そうですね。あとは、FireFoxの拡張の勉強とかも始めていて、そのあたりで面白いことができればなぁと思っています。
川井: 具体的にはどういった形で?
蓑輪:具体的にはちょっとまだ言えないですけどね。
川井: なるほど。これはラボの仕事ですか?
蓑輪:そうですね。
川井: 「Scheme」のほうは個人的なお仕事ですか?
蓑輪:個人もラボも両方ですね。
川井: サイボウズ・ラボのミッションは情報共有をテーマにされているって伺っていますが、やっぱり、基本的にはそこで全ての線が統一されている感じですか?
蓑輪:そうですね。一本テーマの線が決まっていて、その周囲で比較的自由にテーマを選べるという感じですね。
川井: なるほど。あとは、今後近い将来のものがあればそれでも結構なんですけども、会社経営も0.5%あるってことだったんですが、ゆくゆくやりたいことって何かありますか?
蓑輪:自分の歩んできたキャリアパス的に、ひとつ面白いなと思うのが、OSとか言語処理系のような普通のプログラマが目にしないレイヤーのプログラムとそれ以外にユーザが一番目に触れるであろうWeb系のプログラムの両方が分かるってことがあるんです。両方わかりますっていう人はそんなにいないんじゃないのかなと分析していて、それを生かしたようなサービスが作れればいいと思っています。
川井: なるほど。技術的には幅広い意味でOKだけど、アイディアベースをどうしようかって所ですね。
蓑輪:そうですね。
川井: サービスを作りたいというのは、世の中のためにという考えなんですか?
蓑輪:そうですね。OSは、自分がまずは使えるようにっていう感じですが、Webサービスに関しては、弱者の為のWebサービスがいいですね。Rimoとかもそうなんですけど、Rimoの場合は疲れているときにも気軽に見られるとか 、そんなに気張らなくても見られるとかいうのがテーマの1つでもありましたし、張り付いてなくてもいいってのがあったりとかなんです。でも、最近のインターネットサービスって結構めんどくさいっていうか、声の大きい人が強いとかがあるじゃないですか。そういうのじゃなくて、もっと一般の人が使うようなWebサービスが作りたいですね。
川井: リテラシーが低い人でも使えるということですか?
蓑輪:リテラシーが低い人っていうとちょっと言い方が悪いですね。例えば世の中には、家電製品に詳しくない普通の人が圧倒的に多いじゃないですか。でもたいていの人は説明書を読まなくても何となく使い方が分かりますよね? でも、Webの場合、現時点では「とっつきにくいけど、この説明の通りやればできるんだからやってよ」というサービスの方が多いと思うんです。こういう部分を改善して、説明書を読まなくても使えるとか、人間が本来持っている弱さや面倒くさがりな部分を肯定し、それを補うようなツールを作りたいなという、そういう方向ですね。
川井: なるほど。生活の中に自然に溶け込むようなってことでしょうかね?
蓑輪:そうですね。
川井: 最後に若手へのアドバイスをお願いします。
蓑輪:基本的に、僕がお会いした若い人は、全員僕なんかよりとても優秀なので、そのまま突き進んで僕みたいなおじさんを脅かしてほしいなぁと思っています。ちょっと前までは、年をとっていればいるほど優秀っていう図式が成り立っていたと思うんですけど、若くても優秀な人が多くて、最近はぜんぜんそれが成り立たなくなっていると思っているんです。なので、とりあえずそのまま突き進んでもらって、ちょっと油断している僕みたいなおじさんのおしりを突っついてほしいですね。そうしていただければ、業界的にも底上げにもなるかなぁと思います。
川井: なるほど。アドバイスというかお願いみたいな感じですね(笑)
蓑輪:そうですね(笑) なんか、10代なのにコンパイラをかいてますとか、中学生なのにあれこれやってます、みたいのを聞くたびに自分はびくびくしながら「やばいやばい」ってなりますね(笑)
川井: でも、それって一世代前の方もおんなじようなことを思ってたと思うんですよねぇ。
蓑輪:なるほど、そうかもしれませんね。
川井: でも、本当に若くて優秀な方が多いのは実感しますね。先日インタビューを公開した松野徳大(tokuhirom)さんも23歳なんですが、本当にすごいです。
蓑輪:そうですよね。よく一般的に聞く「近頃の若い人はあれが駄目だこれが駄目だ」っていうのは、僕はほとんど思わなくて、若ければ若いほどちゃんと礼儀もなってるし、教育も行き届いてるし、優秀だし、文句の付け所がないなぁみたいな感じの印象を受けますね。
川井: なるほどなるほど。それはそれとして、あえてプログラミングの世界で生きていく為のアドバイスをするとしたら何かありますか?
蓑輪:そうですねぇ。優秀な人との距離感だけは見誤らないほうがいいかなと思っています。ものすごく遠くに感じていたものが実はそんなに遠くなかったっていうことが今でもよくあるし、昨日まで呪文にしか見えなかったコードがすっと読めるようになるってこともあるんで、優秀な人との距離感で絶望してあきらめるのはもったいないと思いますね。やっぱり、インターネット上だけで観察していると、過程がぜんぜん見えないんで、その人は元から優秀だったり急に優秀になったりするじゃないですか。でも、実はそこには過程があって、優秀になってきた積み重ねがあるので、そこは自分も同じようにやれば、それ以上になる可能性は十分にあるっていうのは分かっておいて損はないかなぁと思いますね。
川井: まさにそんなことをこの武勇伝を見ている人にはぜひ伝えたいなぁと思っているんです。本当に嬉しいアドバイスをいただきました。これでちょうど時間になりました。本日は、本当にありがとうございました。
蓑輪:こちらこそ、ありがとうございました。


 この企業の募集案件を見る

サイボウズ・ラボ株式会社
会社社名 サイボウズ・ラボ株式会社
http://labs.cybozu.co.jp/
代表取締役 畑 慎也
事業内容 インターネット/イントラネット用ソフトウェアの研究開発
資本金 4000万円
所在地

〒107-0052
東京都港区赤坂2-17-22 赤坂ツインタワー東館 15F

資本構成 サイボウズ株式会社100%子会社
サイボウズ株式会社のホームページ
取引銀行 三井住友銀行 飯田橋支店
アクセス

◆東京メトロ 銀座線・南北線 「溜池山王駅」

 12番出口より 徒歩約5分
◆東京メトロ 千代田線・丸の内線 「国会議事堂前駅」

 12番出口より 徒歩約7分
◆東京メトロ 千代田線 「赤坂駅」 2番出口より 徒歩約7分
◆東京メトロ 南北線 「六本木一丁目駅」

 3番出口より 徒歩約8分



次に紹介したのは→ ※現在オファー中!!乞うご期待!!
これを読んだあなたに
オススメの会社は→
株式会社はてな
株式会社はてな



ページ上部へ戻る
↓協賛中!!
Mashup Award 4th
ホーム