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第32回 前編  荻野淳也 氏 |コントロールプラス株式会社
(id:ogijun)
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荻野:Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)それと並行している話なんですが、NeXTっていう黒いコンピュータを買ったんです。これはアップルコンピュータのスティーブジョブズがアップルを追われてから作ったコンピュータなんですよ。買ったのは95年なんですけど、その頃X68000を使っててすごく非力だと感じるようになってきていたんです。次に出てからしばらくしているX68030ってマシンを大枚はたいて買うか、ユーザーが同人ハードみたいにして作っていたX68030-040turboっていうのがあって、それを買うかってずっと悩んでたんです。Macを買うっていうのはさきほども言いましたけど、考えられませんでした(笑) その時に、研究室でNeXTっていうのを見て一目惚れしてしまったんです。なぜかっていうと黒かったからなんです。黒いコンピュータをずっと探していたんですよ。X68000も黒いツインタワーのあの外見がよかったわけですよ。自分の部屋に置くコンピュータは格好よくないと駄目だって思っていて、NeXTを見た瞬間に私はこれを買わねばならないと思ったんです。
川井:なるほど(笑)
荻野:その時に谷山浩子さんのオフ会で知り合った、結構コアなコンピュータの技術者の方が、これからはオブジェクト指向だよみたいな感じでいろいろ懇切丁寧に教えてくれて、Smalltalkをやらねばならないとか偏った知識をいっぱい授けてくれたんですけど、その人に相談したら、NeXTはとても素性のいいマシンだから買うといいんじゃないかって言われたんです。ということもあって、NeXTを買いました。でも結構向こう見ずだったみたいで、さっぱり使い方が分からないんですよ。
川井:なるほど(笑)
荻野:Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)当時、発売から5年くらいたってちょうどリース落ちの中古が出てくる時期だったんです。リース落ちのNeXT Cubeを秋葉原で40万くらいで買ったんですけど、使い方が分からなかったんです。今にして思えば、それがUNIXとかオブジェクト指向との出会いでしたね。でも何をしていいか分からないので困ってしまって、ASCIInetとかでもいろいろ助けを求めていたら、NeXTユーザー会(NeXus)っていうのを発見したんです。そこで例会っていうのをやっていて、月1回集まって、勉強会みたいなことをしていたんですよ。NeXTを当時買っていたのって、お医者さんとか社長さんとかばかりだったんですけど、そういう人達が自分の作ったプログラムを楽しそうに見せ合ったり、技術のノウハウを交換したりしていたんです。
川井:そうなんですか。
荻野:95年とか96年はNeXTは冬の時代でこれからどうなるか分からないっていう時だったんです。もうハードウェアからも撤退しちゃったし、ソフトウェアもばか高いのはあるにはあるけど、あんまり活発にバージョンアップされているわけでもないしっていう感じで、NeXTユーザー会自体の活動も段々とまばらになっていたんですね。
川井:そりゃ、そうなりますよね。
荻野:でも、最初の例会がとても面白くて役に立ったんで、僕としては困るわけですよ。それで、事務局に掛け合ったら、やるって人がいればやるんじゃないのみたいなことを言われて、勝手にユーザー会の渉外担当を名乗っていいからって許可も貰ったんで、会場を提供してもらえる日程を調整して、あちこちにNeXTユーザー会のお知らせっていうのを投げて回ったんです。勿論ボランティアなんですけどね。NeXTユーザー会の人たちにもいろんなことを教えてもらって感謝しているんです。これも今思えば、コミュニティ活動ですね。
川井:そうですね。コミュニティ活動ですよね。
荻野:NeXTっていうのは今の型の私のプログラムの原点なんですよね。本格的というかプログラムにも研究的な知識が必要だっていうのを肌で分かったんです。
川井:なるほど。
荻野:そして、96年12月20日ですね。忘れられない日が来ます。アップルコンピュータがNeXTの買収を発表したんです。それで、私はX68000ユーザーだったんで絶対に買わないと思っていたMacintoshのメーカーに戻ってくることになって、NeXTが買収されるという形でアップルのユーザーになったんです。
川井:そういうこともあるんですね。
荻野:Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)NeXTでいろいろやっていくうちに、この環境でこれを活かした仕事がしたいって強烈に思うようになったんです。NeXTユーザー会にいる諸先輩方はそういう道を確立されていたんですけど、僕にはそんなコネもなかったし、今いる会社でそういうことができたらいいなとも思っていましたけど、いきなりそんな提案もできないしという感じだったんです。もうNeXTのハードウェアなんかなくてもPCでNeXTの技術なんかは使えるようになっていて、OpenStep for Windowsなんていう技術とかも出ていましたから、そういうのをやりたいなっていう提案を少ししてみたんですけど、会社はそのとき、WebLogicという技術に注力することを決めていたんです。僕はそのWebLogic部隊じゃなくて、C++でCADを書いたり、Delphiでタッチスクリーンの端末を書いてみたりということをずっとやらせてもらっていたんですけど、好きなものを使えるところにいかないと駄目なんじゃないかなってぼんやり思い始めたんです。
川井:なるほど。
荻野:それで、NeXTに関係する仕事をしたいしたいってずっと思っていたら、当時のNeXTユーザー会の重鎮というか有名人だった佐藤徹さんという人が、そんなにやりたかったら一緒にやろうかって声をかけてくれたんです。その後、いろいろ紆余曲折があって、それまでいた会社を辞めて、佐藤徹さんからお仕事をもらって、フリーランスでNeXTの仕事をすることにしました。
川井:なるほど。そうだったんですね。

荻野:Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)佐藤さんはキヤノンででNeXTのサポートをずっとやっていた方で、キヤノンを辞められて、そのあといろいろとあって当時はガラパゴスシステムズという屋号で個人で活動することを決めたところだったんです。なんでそんな名前かというと、当時アップルが発表したNeXT由来のOSの名前がダーウィンだったので、それにちなんだ名前をつけようと発想したらしいいんです。
川井:そうなんですね。
荻野:それで、佐藤さんといくつか一緒に仕事をするうちに、佐藤さんから、やっぱり会社にしようかと思うんだけど一緒に会社にしないかって声をかけてもらったんですよ。僕も望んでいたことなんで、こちらからもお願いして、ガラパゴスシステムズの立ち上げメンバーとして一緒に起業したんです。
川井:起業したんですか!
荻野:まあ、個人事業の法人成りなんですけどね。最初はチーフプログラマーで、後にCTOにしてもらいました。
川井:会社はまだ残っているんですか?
荻野:Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)会社自体はまだありますね。そこでも受託開発をたくさんやって、まあトラブルとかも一通り経験して、出入り禁止になった会社もあり、成功事例もいくつかあってといういろいろな経験をさせてもらったんですけど、やっぱり、最初の会社もベンチャーで少人数だったんですけど、あくまで人が作った会社だったので、自分が会社を作るっていうのはこんなに大変なことなんだなと感じましたね。常に稼いできて他のスタッフにお給料を払わないといけないし、預金残高とかを気にしないといけないですからすごく大変だったんですけど、それなりにやりがいはありましたね。
川井:それは大変ですよね。
荻野:でも、ガラパゴスシステムズはNeXTのことしかやりませんって標榜していたし、佐藤さんも業界ではそういう意味で名が知れていた方なので、やる内容については全然悩まなくていいんですよ。うちがやるからには、NeXTですよ、WebObjectsですよ、Mac OS X Serverですよって、そういうポジションがちゃんと確立されていて、非常に楽しかったですね。
川井:色がはっきりしていたんですね。
荻野:はい。当時、NeXTの技術で食おうと思ったら、WebObjectsしかなかったんでそれをずっとやっていました。WebObjectsは本当に素晴らしいフレームワークだと思います。あと、大規模ネットワークを構築するにはMac OS X Serverが非常に有効なんですけど、それは佐藤さんが得意な領域だったので、私はWebObjectsのプログラミングという棲み分けでやっていたんです。
川井:なるほど。
荻野:WebObjectsっていうのは、アップルが販売していた開発環境で、1994年に発表されています。なので世界最古のWebアプリケーションサーバーフレームワークなんです。一時期、アップルとNeXTの間で権利関係が不透明になって買えない時期があったんですけど、後にアップルからちゃんと発売されて、それを買ってずっとSIの時に使っていました。
川井:これは何年くらいやられていたんですか?
荻野:2003年くらいまでですかね。
川井:ということは4年くらいですか。それは、立ちあげられて軌道に乗ってくる中で、何か意見の相違とかが出てきたりしたんですか?
荻野:そんなに強い対立があったわけじゃないんですけど、簡単に言うと違うことがやりたくなってきたということですかね。実際にうまくいかなかったプロジェクトとかがありまして、今、いろいろ話題にもなっていますけど、受託開発の限界っていうのがあるんじゃないかっていうちょっとした挫折がありましたね。あと、Paul Grahamさんの一連のエッセイをある時に読んだんです。その中に「もうひとつの未来への道(The Other Road Ahead)」というタイトルのエッセイがあるんですけど、このタイトルはビルゲイツさんの著書の「ビルゲイツ未来を語る(The Road Ahead)」に対応したもので、ビルゲイツ以外の未来への道っていう原題なんですよ。
川井:そうなんですか。
荻野:Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)その中でWebアプリケーションこそが未来のアプリケーションの形だってことをかなり力強く言っているんですね。僕はWebObjectsのプロジェクトをずっとやっている中で迷いを感じていた部分があったんですね。それは何故かというと、例えば合い見積りになったときなんかだと、VBの作りん込んだアプリケーションなんかとコンペティになってあたるわけなんですけど、WebObjectsを提案することによって、使いにくいWebブラウザの操作をお客さんに強要しているんじゃないか、ネイティブのアプリケーションならできることを戻るボタンも使いにくいようなWebアプリケーションの世界を強要しているんじゃないかっていう漠然たる不安感があったんですね。その不安感をこのエッセイが奇麗に払拭してくれたんです。
川井:なるほど。
荻野:この方は、Yahooストアを作ってYahooに売り払ったことで有名なわけですけど、実際にそういう風に成功した人が、あとからあのときの成功を振り返るみたいに言ってて、そんなに昔からこういうことを見抜いていた人がいたとしたら、自分はなんと愚かだったのだろか、それもWebObjectsという最高の武器を持っていながらそれができていなかったなんてと思って、やっぱりこういうことをやらないと駄目なんだなと思ったんです。
川井:なるほど。
荻野:特にこのエッセイが言外に言っていたのは、コンシューマー向けのサービスをやらないといけないっていうことでした。ユーザーがたくさんいないとWebアプリケーションの良さが生きてこないんですよ。当時、ユーザーが多くてせいぜい50人とかのイントラネットの仕事とかが多かったんですよね。そうやって考えたら、イントラや社内のシステムの受託開発をやっているよりももっと違う方法があるんじゃないかなって思ったんです。
川井:そういう展開なんですね。
荻野:Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)はい。でも佐藤さんはずっとお世話になったパートナーですから、足を向けては寝れないんですけど、佐藤さんが方針転換してくれる気もしなかったし、もっと堅実な道を考えている方だったんでそもそも彼の志向とはマッチしないだろうし、やっぱりちょっと辞めようかなと思って飛び出したって感じですね。
川井:なるほど。
荻野:その後、首尾よくというか同じタイミングでNeXTユーザー会で、ずっと僕らにプログラムを教えてくれていたすごい人が東海地方から東京に出てくることになって、ちょうど一緒に仕事をしていたんで後釜になってくださいってお願いして、その人が今のCTOになっているという感じです。
川井:そうでしたか。
荻野:でも結局、そのガラパゴスでお世話になったお客さんの繋がりや、つてを使って個人的なお仕事をもらってというのがしばらく続きましたね。



続きは後編で!後編は20日(月)公開予定!ご期待ください!!
コントロールプラス株式会社
Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)Webエンジニア武勇伝 荻野淳也氏(ogijun)
会社社名 コントロールプラス株式会社
http://www.ctrl-plus.jp/
設立 2005年3月3日
代表取締役社長 村田 マリ
従業員 15名(契約・アルバイト含む)
事業内容

1.インターネットホームページの企画および制作

2.インターネット広告代理店

3.メディア事業 「デート通.jp」「キャリアコンサルタント.jp」

4.イベント企画および運営

5.セールスツール、ノベルティ制作

所在地

〒103-0025
東京都中央区日本橋茅場町2-12-2 Apartment 2122 3C
(茅場町1番出口から徒歩1分)



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